vol.6 スマートフォンと睡眠

vol.6 スマートフォンと睡眠

スマートフォンと睡眠電車内を見わたすと、本や新聞ではなく、スマートフォンや携帯電話を見ている人が多くなった時代となりました。総務省の2018年のデータによりますと、国民の60.9%がスマートフォンを保有しています。 しかし、スマートフォンの普及とともに、寝つきが悪くなったり、不眠症になったりする方も増えており、スマートフォン保有者の方が未保有者と比べ短い睡眠時間となっていることが明らかになっています。

文部科学省が行った睡眠と生活習慣に関する調査では、小学生から高校生において、スマートフォンの操作時間が長いほど就寝時間が遅いことが報告されています。その理由として、スマートフォン使用により、就寝前に眠気を誘ったり、リラックスしたりする時に優位になるはずの「副交感神経」が働かず、反対に、目覚めている時や興奮している時に優位になる「交感神経」が働くためであると考えられます。

また、スマートフォン・パソコンのバックライト(ブルーライト)ディスプレイを見続けることによって、眠りを誘う「メラトニン」というホルモンが分泌しにくくなるという研究も報告されています。お布団に入ってからスマートフォンを操作している方も多いと思いますが、椅子に座っている時よりも画面から目までの距離が近くなり、眠気が覚めてしまうだけではなく、眼球疲労も起こしやすくなってしまいます。

 スマートフォンは、もはや日常生活でなくてはならない必須アイテムではありますが、就寝前のスマートフォンの使用は睡眠に悪影響を及ぼす可能性があります。就寝60分前にはスマートフォンを触らず、良質な睡眠を確保できるように心がけましょう! 


【コラムの執筆】
奈良女子大学 中田大貴先生
中田大貴先生
奈良女子大学 研究院生活環境科学系スポーツ健康科学領域 准教授 博士(理学)

日本学術振興会特別研究員を経て、2009年早稲田大学スポーツ科学学術院研究院助教、2013年奈良女子大学文学部人間科学科スポーツ科学コース准教授となり、2014年より現職。スポーツ心理学・認知神経科学を専門とし、運動中の感覚認知メカニズム等について研究を進めるとともに、指導や講演にも従事。